横浜家庭裁判所 昭和32年(家イ)280号
国籍 米国カルフオルニヤ州 住所 横浜市
申立人 マレックス・エッチ・マーティン(仮名)
国籍 米国ハワイ州 住所 申立人に同じ
相手方 メアリー・ジェイン・マーティン(仮名)
調停条項
一、相手方は昭和二七年七月○日婚姻以来喧嘩口論がたえず、又時としては格闘を演じ、ために申立人に精神上重大なる苦痛をあたえ、今後申立人をして婚姻生活を継続しがたい状態にいたらしめた事を認め、よつて当事者双方は本日限り離婚する。
二、当事者間の子エッチ・ティ・マーティン(昭和三〇年九月○○日生)の親権者は母たる相手方と定め同人において養育監護すること、なお申立人が上記子供に対し時々会うことに対し、相手方は異議がないこと。
三、申立人は相手方に対し、米国政府より相手方に対し、家屋貸借料の支給があるまで毎月一五〇ドル宛を支払うこととし、上記貸借料の支給が米国政府よりありたる後はその額を五〇ドルにし同支払はいづれの場合においても給料日の次の土曜日とし、相手方代理人弁護士○○○○の事務所においてなすこと。
四、当事者双方は本件に関し今後互に上記以外何等財産上の請求は一切しないこと。
五、本件調停費用は各自弁とする。
(家事審判官 菊沢保節 調停委員 蓮沼長一 同 赤坂文子)
参照 事件の実情
一、申立人は一九一七年四月○日北米合衆国ミゾリー州○○○○市に於て出生した米国人相手方は一九三一年七月○○日に米国ハワイ准州○○○○市に於て出生した米国人であるが、昭和二七年七月○日日本法に従い横浜市○区役所戸籍吏に届出を為して婚姻を為し且つ同日在横浜米国領事館に於て米国法に従つても適法に婚姻手続を為した。
二、婚姻後両名は引続き横浜市に居住し、現在も個人の住宅を質借し居住している。而して申立人は日本に定住の意思を有している。而して申立人と相手方との間には昭和三〇年一九五五年九月○○日に出生した男児エッチ・ティー・マーティンがある。
三、申立人は左記の如き事情でこれ以上相手方と婚姻を継続することは出来ないから上記の如き調停を求める次第である。
即ち昭和三一年○月の或る日相手方は申立人に対して彼女は前から申立人を愛していなかつたこと、そして申立人が婚姻するようにと述べたので婚姻したにすぎないということを告白した。同じ○月に或る土曜日の朝相手方は仕事に出かけそして申立人に対して終日仕事だと述べた。昼になつて申立人が昼食を誘ふ為に相手方の事務所に行くと相手方の監督者から相手方が仕事を報告をしていないと告げられた。それから「○○○○」というバーに友人に会いに行つたところ、そこで相手方が三、四人の男と飲酒して居り、しかも相手方は相当酔つているように見えた。申立人は興奮してすぐにそこを立去つた。二時間後に申立人がそこに戻ると依然として同じ男達と酒を飲んでいたので又そこを立去つた。午後四時に家に帰つてみると彼女は其処にいた。そして申立人が家に入ると相手方は申立人を口汚くののしつた。又度々申立人と相手方とがパーテイに行つたり又友人達と出かけると相手方は酒を飲み始めそうすると友人や隣人の面前で申立人を口汚くののしつた。
四、これより以前にも相手方は度々夜おそく迄ひどく飲酒し酩酊したことがあつた。相手方は飲酒すると他の人々に対して多大の愛情を示し申立人の前でも構はずにキスをしたり膝の上に坐つたり、抱きしめたり度々相手方は飲酒している間に申立人を口汚くののしつたが飲酒中にしたことを覚えてないというので申立人は努めて忘れようとし相手方に対して酒を飲まないよう乞うた。又昭和三一年○○月には酔つて寝室に行き事故を起したこともある。
五、相手方は三、四日も申立人に対して口をきかず口をきくと思うと申立人の人格を落すようなことを言つたことがある。又相手方は申立人を人々の前で辱しめたこともあつた。
六、以上の如き事情で申立人は到底相手方との婚姻を続けることは耐え難くなつた。法例第一六条は「離婚はその原因たる事実の発生した時における夫の本国法によるべき旨定めて居り又法例第二七条第三項は「地方により法律を異にする国の人民についてはその者の属する地方の法律によるべきことを定めているから本件離婚の準拠法は夫たる申立人の以前の住所があつた米国カリフォルニア州法たるべきであるが米国々際私法によれば離婚は当事者の双方又は一方の住所の存する地の法廷地法によるのであるから、結局我国法を以て離婚の準拠法とすべきである。そして上記の如き事実は我国法の該当法律たる民法第七七〇条第一項第五号に所謂「婚姻を継続し難い重大なる事由」の存するときに該当すると思料する。尚米国カリフォルニヤ州法によつても、上記の如き相手方の行為は精神的悩みを与へる極端な虐待に該当して離婚原因を構成する。
七、そして申立人と相手方は話合つた結果離婚の已むなきことを相互に諒解した。そして男児エッチ・ティー・マーティンは母親が監護することが子供の将来の為に良いと思われるので上記の如き調停を求めるのであります。